|
まるでペンキをひっくり返したかのような青い空に、
さらにペンキで思いっきり書きなぐったような白い雲。
視界を埋め尽くす青と白は、穏やかな風に揺れながら少しずつ形を変えていく。
……ナルトのいたずらみたいに豪快な青空だなー。
「しーっ! サクラちゃん。そーっと近づくってばよ!」
「あんたこそ静かにしてよ、ナルト」
そんなことを考えていたら、本当にいたずらをしかけに近づいてくる2つの気配。
ひとり足りないのは、アホくさいと言って辞退したのだろうと大体察しがつく。
まぁ、目的はお見通しだっての。
「やったぁ、ぐっすり寝てる」
「こんなに気持ちいい天気だったら、さすがのカカシ先生もぐっすりだってばよ」
目を閉じたまま気配をさぐると、その二人は分かれてオレの両側に回った。
急に音が消えて、緊迫した空気が流れる。
「もうちょっと、もうちょっと」
声を殺してささやくサクラの声。
ということは、近づいてくる手はナルトか。
やれやれ。落ち着いて昼寝もできやしない。
そもそも今日はこんなに快晴だってのに、こいつらの興味はオレの素顔にしかないのかねぇ。
「たまには」
「えっ!?」
「わっ!?」
「のんびり寝っ転がって青空鑑賞するのもいいんじゃない?」
ほーら、空はこんなにきれいだよ。
と、伸びてきた手を掴んでひょい、と身をひるがえした。
くるりときれいな回転を与えて、してやったりと片目を開けた。
「なぁ、ナルト……」
その光景が飛び込んできた瞬間、普段は半分ほど閉じているまぶたを全開にして、
音が出そうなほど大きくまばたきした。
「わーっ!! カカシ先生ってば何やってんだー!!」
背後からナルトの声がして……確かにオレの腕の下にいるのは……
「さ、サクラ!?」
かなりの近距離で、サクラの大きな目がオレの狭い片目の奥を見つめている。
あまりにも突然のことで、サクラの表情も凍りついたまま、顔だけがどんどん赤くなっていく。
……へぇ。おでこ、というかお肌もつるっつるなのねー。若いっていいよなー。
そう大して長くない時間の中で、普段はあまりじっくりと見ることのないサクラの顔を隅から隅まで観察した。
「サクラちゃんから離れろってばよ! カカシ先生!」
ナルトがオレの背中に飛びついた瞬間、サクラも我に返ったらしく、力の限りの叫び声を上げてオレを殴った。
訴えてやる、このセクハラ上忍……とかなんとか。
大して痛くもなかったけど、唯一露出されているオレの右目から頬にかけて、うっすらと赤い手の跡が残された。
通り過ぎる風が、少しだけピリッとした感覚を与える。
「お年頃の女の子は難しいねー」
再びあおむけになって寝転がると、やはりそこには濃い青に豪快な雲が書きなぐられていた。
いずれはそんな日も来るだろうに。
「……」
風がもう一度、頬を撫でた。そしてふいに思った。
まだ当分の間は、誰かの顔を見上げることなく、空だけを見ていて欲しい、なんて。
「親心みたいなもんかな……」
何故か口に出してつぶやいた。なんとなく、自分で確認するように。
「あー、いい天気だ」
何だか怒らせたみたいだし、あとで二人に甘いモンでもおごってやるとするか……。
オレは被害者のはずなんだけどね。
fin 2007.08.12 zono
|