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抱けるあの娘 3


MARCO × ACE→ANNE



ランタンの炎がゆらりと揺れると、壁に投影された影もゆらゆらと形を変える。
「……んっ……んん……!」
かなり長い時間、唇を拘束され、エースは緊張と息苦しさから逃れようと必死で体をよじっていた。
しかし、大きな手と体でがっちりと押さえ込まれると、そんな努力は何の意味もなさなかった。
マルコの舌がエースの口の中に容赦なく侵入して、ぐりぐりと歯列をなぞり、エースの舌を絡め取る。角度を変える瞬間に熱い息が漏れて、出そうとも思っていない甘い声が一緒にこぼれる。
「……は……んっ……」
酸欠状態に近いせいか、頭がボーッとしてくる。思いのほかキスにかける時間が長くて、初めはされるがままだったエースも、マルコの舌の動きに合わせて力を抜くと、まったりとした感触が心地よく、脳内がとろけてしまうような感覚に陥った。
このまま喰われちまいそうだ、とエースは頭の奥でぼんやりと考える。
ぎゅっと閉じていた目をそっと開けると、焦点すら合わない場所にマルコの顔があって。普段から伏せがちなまぶたをさらに伏せ、エースの様子をうかがっているように見える。

……しかし長っげえな……マルコは他の女抱くときも、いつもこんな感じなのかな……?

自分の倍ほど生きている男だ、経験だってそれなりに、いや相当あるに違いない。
「おいおい……他のこと考えてる余裕なんてあんのかよい」
そう言って、マルコは膝を立ててエースの足を割り、細い体に全体重をかける。

……えっ!? ちょ、マジで……マルコの、でかくねえ?

別に見たことがなかったわけではない。クルーと一緒に風呂に入ることもしょっちゅうある。しかし、通常時の大きさからは想像がつかないほど、マルコの下半身が昂ぶっているのを、エースは服の上から押しつけられているその感触だけでわかってしまった。

……やっべえなあ……オレ、こんな小さい体で入んのかな……?

そんなことを考えている間にも、耳の中に舌を入れられ熱い息を吹き込まれると、エースの体はびくんと反応して、それに合わせて甘い声が漏れる。
「ふーん……ここ、弱ェのかよい」
ニヤリと不敵に笑うと、マルコはエースの耳から首筋を何度もなぞるように舐め回した。
「ひゃっ……ちょっと……んんん……」
エースの体はエビのように跳ね、マルコもそれをおもしろがって笑い、さらに攻撃する。首筋を通っていく生き物のような舌と、きれいに整えられた顎髭が、同時に異なる感触を落とすものだから、頭の奥と指の先からぞわぞわと快感が襲ってくる。
「ああんっ!」
エースが自分でも驚くくらいの女っぽい声を上げると、マルコは口角をぐいと持ち上げて、なかなかの悪人顔を見せた。
「いい顔になってきたなァ……」
そう言って、粘っこいキスをしながら、今度はチューブトップの上から胸を掴む。下から上へと持ち上げるように何度か揉みしだいて、そのままずるりとチューブトップを引き下ろした。
「わあっ! いきなりかよ!」
「いきなりも何もねェだろい」
さっき食堂で、他のクルーにチューブトップをずり下ろされそうになったとき、すかさず制止したのは一体どこの誰だったのか。
あっという間に露わになった白い胸をしばし眺めて、マルコはううむ、と首を傾げた。
「……最初に見た時は、もっとでけェと思ったんだが……」
「さ、最初って! あん時なんだかんだ言ってちゃんと見てたんじゃねえかよ! このエロオヤジ!」
「目の前に女の裸があって、見ねェ男がどこにいるよい」
しれっとそう言い放つと、マルコは桜色の胸にちゅう、と吸い付き、もう片方の先端を指でつまんだ。
「あんっ……ち、小さくて悪かったな……!」
精一杯、悪態をつきながらも、エースの心中は複雑極まりなかった。自分だって女の胸を大きいだとか小さいだとか散々言ってきたくせに、いざ自分が言われるとこんなにも腹が立つものだとは。

……胸は大きさじゃねえだろ! 形とかやわらかさとか、いろいろあんだろうが、ちくしょー!

「まァでもオレは、このくらいが……手にちゃんと収まるぐれェのが丁度いい」
ごつごつした大きな手が器用に胸を弄び、舌で先端を転がされ、唇で吸い上げられると、頭の奥でビリビリと電流が流れる。
目の前でもそもそ動いている黄色い頭を掴み、わしゃわしゃとその髪を崩す。吐息混じりの少し抑え気味のあえぎ声が部屋の中に響くと、そこはさらに異様な空間に変わっていく。
「もっと声出せよい……アン」
そこで名前を呼ばれて、ああそうか、とエースは思った。
自分は今、女で。エースではなくて「アン」なのだ。せっかく女になるチャンスをもらったのだ。それなら、別人になりきってこの時間を楽しんだ方が絶対いいに決まってる。

……そうだ。「アレ」も検証しなきゃなんねえし、いちいちあーだこーだ言ってちゃ、もったいねえ。それなら……いっちょやってやるか。

「マルコ……」
初めて名前を呼ぶと、胸に顔をうずめていたマルコが起き上がり、エースを見下ろす。その顔をぐいっと引き寄せて、エースの方からキスをした。
「……好きにしていいよ?」
エースが涙目で、訴えるように甘い声を出すと、ぞわり、とマルコの背中に鳥肌が立った。同時に下半身に熱が集中する。

……今、完全に女の顔になってたよい。つーか、何だこの変わり身の速さ! マジで覚悟決めやがったなこいつ……。

――これは勝負だ

この勝負、「溺れた」方が負けだ、とマルコとエースは同時に思った。

「……壊れんなよい」
「それはあんた次第さ」
「……言うねェ」
そして互いに先を争うように相手の唇に貪りつく。
荒い息を吐いて、髪をぐしゃぐしゃにしながら、いつしか二人とも身につけているものすべてを脱ぎ捨てて、絡みつくように抱き合っていた。

「……ってててて!! 痛い! いてえよっ!」

いざ、挿入しようとしたときに、エースが泣いて暴れ出したので、マルコは重要なことに気づいてしまった。

……そういやこいつ、処女じゃねェかよい! そりゃそうか、初めて女になったんだもんな……

「こんなに痛ぇなんて思わなかった……こんなんで本当に百倍気持ちよくなれんのかな」
「なんだよい、その百倍って」
涙目をこすりながら、エースは今日の昼にサッチたちと交わした会話の内容をマルコに伝えた。
それを聞いたマルコは、開いた口が塞がらない。
「まさかおめェ……そのために女になったのかよい?」
「ちげえよ! その話とこれは全く別の話だけどさ! でも……せっかく女になったんなら、今晩誰かとヤッとけって、サッチが……」
もごもごと最後の方は口ごもりながら、エースはマルコから顔を背けた。そしてマルコは、再び額に青スジを走らせた。

……「今晩誰かとヤッとけ」たァ、どういうことだよい!? 何なんだそのザックリ過ぎる指示はよい!! ……で、その誰かってェのはオレのことかよい。

明らかになっていく事実に、マルコは怒りを抑えることができなかった。煽られて、乗せられてしまった自分にも腹が立つ。しかし、食堂でサッチが「エースちゃんとヤリたい奴!」と叫んでいたのは冗談ではなかったのだと知ると、今さらながら気が気でなくなってしまう。
またくだらねェことを、と気にも留めずその騒ぎを聞き流していた。もし、あの時エースがあの中の誰かを選んでいたら……?
「おめェは、ヤレりゃ誰でもよかったのかよい?」
急に怒り出したマルコに、エースは何事かと肩をすくめる。
「ち、ちがっ……! オレ、ちゃんと真面目に考えて……本当に真剣に決めたんだよ」
頭ひとつ以上違う体格差とか、大きくて温かい手とか、そういうものを全部ひっくるめて、マルコならいいと思ったのだ。それを誰でもいいのかなどと聞かれれば、さすがにエースだって黙っていられなかった。
「な、何だよ! マルコだって……自分こそ女だったらそれでいいんだろ? 中身が誰だって……オレじゃなくたって!」
「はァ? 何わけわかんねェこと言ってんだよい。オレはなァ……」
そこでハッと我に返ると、マルコは自分たちがいかに不毛な会話をしているのかに気づいた。
さっきまでいきり立っていた下半身も、すっかり萎えてしまい、ベッドの上にあぐらをかいてため息をついた。
「……ちょっと、整理するよい」
エースも起き上がって、しゅんとしたままうつむいている。
「まず、おめェは、女のセックスが男の百倍気持ちいいのかどうかを知りてェ」
「うん」
「で、それとは関係なくイゾウにだまされて女にされちまった」
「うん」
「だから、ついでに誰かとヤッてそれを確かめることにした」
「ついでって……ざっくり過ぎねえ?」
「まァ、最後まで聞けよい……そんで、その相手にオレを選んだ、と」
「……そうだ」
「オレが拒否したらどうするつもりだったんだよい?」
「そんときは……別に、さっさと寝て元に戻れりゃいいなって」
「ふーん、なるほどねェ……よし、続きやるよい」
そう言っていきなりマルコはエースを抱えて押し倒した。
「えっ……!? ちょっと、それで解決したのかよ?」
「そんだけの理由がありゃ十分だよい」
訳がわからず、エースは呆然としてマルコの顔を見上げていた。
「つまりおめェは、女になって気持ちよくなりてェ。そんで、オレに抱かれてェんだろい……上等じゃねェか、それなら全力でイカせてやるよい」
マルコの口から飛んでもない言葉が飛び出して、エースは口を開けたまま、動けなくなった。
そこへマルコが体重をかけてきたものだから、エースは慌ててその顔をぐいと押しやる。
「……何だよい? これでスッキリしたろい」
「ま、マルコはよくてもオレは全然スッキリしてねえよ!」
むう、と子どものように不機嫌な顔をして、エースはマルコを睨みつける。
「マルコは……何でオレを抱いてくれるんだよ?」
別に、何か特別な言葉を聞けるとは思っていない。でも、女なら誰でもいいと思われているのもしゃくだ。
「……相手がおめェだからだよい」
「……え?」
「満足したかよい? じゃ、続き行くぞい」
「ちょ、ちょっと……!」
その後の言葉は聞き入れられず、食べられるように口を塞がれる。
柔らかい、はじけるような肌の感触を堪能しながら、マルコは頭の一角で冷静に考えていた。

……そりゃ、中身がエースで、体が女で、抱けるとくれば……これを逃さねェわけにはいかねェだろい……ん? てェことはつまり、オレは普段からエースを抱きてェって思ってるってことか……いやいやいや、ありえねェだろうよい!

「アン……」
自分の気持ちをごまかすように、マルコはその名前を呼んでみた。
「んっ……マルコ……!」
呼べば返ってくる自分の名前。その声はやたらと扇情的で、さっきよりもずっと艶があるように思えた。
そして何とか挿入すると、エースは最初のうちはひどく痛がって、少し動くだけでも顔を引っ掻かれたりもしたが、少しずつ、ゆっくりと体を揺らすと、泣きそうな声もどんどん甘い鳴き声に変わっていった。
「マルコッ……マルコぉ……!」
ゆらゆらと揺れるランタンの炎に映し出される影が激しく動いている。
部屋の中にはエースのあえぎ声と、ベッドのきしむ音と、体がぶつかる音が混ざり合って響いている。
下からずんずんと突き上げてくる振動を受けながら、マルコの背中に手を回すと、その硬い筋肉は汗ばんでいて、エースはそこに「男」を感じずにはいられなかった。それだけでまた胸がきゅんとして、すっかり自分が女の気持ちになっていることに気づく。

……やべえ、すっげえ気持ちいい……! 女っていっつもこんないい思いしてんのか? ……いや、でもこれってさ……相手がマルコだからそう思えるんじゃねえのかな?

やおら体を起こされ、向かい合わせになると、マルコはエースの腰を抱え、エースはマルコの頭を抱える。そしてまた激しく動きながら、舌を絡め合う。

……うん、だってさ、マルコの顔見てるだけで腹の奥がジュウって熱くなるし、キスしたら頭の奥が溶けそうになるし、そんで挿れられたら、理性もぶっ飛びそうなくらい幸せな気分になるんだよな……それって、誰にでもそうなるってわけじゃねえだろう?

「マルコッ……いいっ……!」
「……まだまだァ……!」
エースがのけぞると、マルコはすかさず胸に顔を埋める。そしてそのまま倒れ込んで、エースの膝をぐいと持ち上げると、重力に任せて落ちるように抜き差しを始めた。
「やっ……もう……ムリッ……!」
ものすごい速さで足元から襲ってくるオルガズムを感じて、エースは叫び声を上げる。
「くっ……たまんねェよい……!」
マルコも汗を飛ばしながら、激しく腰を打ちつける。
汗と涎が混ざった状態で唇を重ね、蒸気のような息にまみれて、マルコは苦しげな表情で最後の言葉を吐き出した。
「たまんねェ……お前、たまんねェよい……エース……!!」

 

* * *


まぶしい朝陽が差し込んで、エースはゆっくりと片目を開けた。
言いようのない倦怠感に襲われ、体が重力に逆らえずベッドに沈み込んでいる。

……あー、そっか……夕べは結局3回……いや、4回ヤッたんだっけ……ったく、タフ過ぎるんだよな、このおっさん……最後の方なんてほとんど気ィ失ってたっつーの、オレ!

重い体を無理矢理回転させると、ちょうど振り返ったところにマルコの高い鼻があり、勢いでちゅっとキスをしてみた。
「んん……」
それをきっかけにマルコの腕がエースを抱き寄せ、寝ぼけたまま唇を重ねてきた。エースもそれに応えるように吸い付いて、しばらくの間そのまったりとした行為に耽っていた。
ぴた、と突然マルコの動きが止まり、エースの背中をまさぐり始める。
おいおい、またヤんのかよ、と呆れていると、マルコは勢いよく目を開いた。それは、普段眠そうに細めている時の何倍も大きく。
「……お前、元に戻ってるよい」
「えっ!?」
がばりと起き上がり、室内の鏡を見ると、確かにそこに映っているのは日焼けをした、精悍な顔つきの少年――エースだった。
鏡の中の少年はひどく困惑した表情で、自分の顔を触っている。
「よかったな……みんなが起きてくる前に部屋に戻れよい」
振り返ると、マルコはごろりと寝返りを打ち、エースに背を向けた。そこにはくっきりと、女の小さな手の幅に爪の跡が残っている。
「……わかった」
あの夢のような出来事はもう二度と起こらないのかと思うと、エースはひどくがっかりした気分になった。
「……なァ、エースよい?」
部屋の扉に手をかけたところで、呼び止められ、エースは振り返った。

「ほ、本当なのか? それは……!」
「あァ、本当だよい」
涼しい顔で腕組みをしているマルコの前で、サッチが驚きの表情でわなわなと震えている。
「まままマジでエースのヤツ、そんなに良かったのか?」
「いや、良かったどころか……最高だったよい」
ペロリと舌を出して、マルコは不敵な笑みを浮かべた。
「わああああ! そんなに良かったんなら、お前なんかにヤラせるんじゃなかった!!」

そして、別の部屋では――

「わああああ! オレ、本当に女になってたのかよ!? ぜんっぜん覚えてねえよ!」
「何だ、覚えてねぇのか。せっかく愛しのマルコ隊長が直々にお相手してくれたっつうのに」
医務室で騒ぐエースを見て、イゾウは艶っぽいため息をついた。
「一晩の逢瀬の後は、すべて水の泡……か。切ねぇ話だな……昔の人間はそうやって想いを遂げてたんだなぁ……」
流し目で遠くを見つめるイゾウを、ナースたちはうっとりと見つめている。

「イゾウーッ! あの薬をもう一度エースに飲ませろ!」

そこへサッチが息巻いて飛び込んで来ると、後からついてきたマルコと、部屋にいたエースが鉢合わせした。
「うわああああ! マルコ、ごめん! オレ、薬を飲んだ後から何も覚えてねえんだよ!!」
エースが飛び上がって医務室の奥へと逃げていく。
「聞いたぞ? お前、マルコにすっげえサービスしたっていうじゃねえか! 覚えてねえんならもう一回薬飲んで、オレにもしてくれ!!」
エースを捕まえようと、サッチが医務室の中を走り回る。
「残念ながら、薬はあの一粒しかねぇよ……どうせ効かねぇと思ってエースに飲ませてみたら、本当に効いたから驚いたけどなぁ」
イゾウが悪魔のような発言をすると、部屋の奥からサッチとエースが声をそろえて「イゾウゥゥ!!!」と叫んだ。

「まァ、結局一番得したのはオレだってことだねい」

マルコがにやりと笑うと、サッチが悔しまぎれに悪態をついた。
「エースを見て変な気起こしたりするんじゃねえぞ?」
「んなことあるわけねェだろい。あれはなァ……ま、おめェらに言ったところでわかんねェだろうが」
勝ち誇った顔で、マルコはひらひらと手を振って去っていく。

「あれはエースとは全く別人の、アンっていう女なんだよい……もう二度と会えねェのが残念なくらい、いい女だったよい」

このエロ隊長がー! と叫ぶサッチの声を背中に受けて、マルコはマストの上にひょいと飛び上がった。
風がそよそよと吹き、しばらくの間ぼんやりと静かな海を眺めていると、ようやくサッチから解放されたエースも上がってきた。

「マルコの作戦通りだな」
「見事な騙されっぷりだろい? こうでもしなきゃ、こっちだって気が済まねェよい」
「あのさ」
「ん?」
エースはマルコと同じ方向を見つめたまま、少し小さな声で言った。
「また……会いたいと思うか? その、アンに……」
マルコは口元を上げて優しく笑うと、エースの頭にぽん、と手を置いた。
「……勝負はオレの負けだよい」
そう言って、そしてそのままふわりと青い翼を伸ばして甲板へと降りて行った。
「……答えになってねえし」

そしてやっぱり胸が「きゅん」としてしまうのは、まだ薬が残っているせいなんだろう、と思うことにした。

 


抱けるあの娘  おわり

2012.01.31