いつもと変わらない朝が来て、そしていつものように一日が始まる。
それでも、私たちは少しずつ前に進んでいて、決して後戻りはできない。
アラバスタまで、あと少し。
「おはよう、ビビ」
ドラムを出ると、ビビに落ち着きがなくなり始めた。カルーもそわそわして甲板を行ったりきたりしている。
「おはよう、ナミさん」
目を覚ます直前の一瞬に見せる不安の表情。でも、すぐに笑顔に戻って私に笑いかける。そんなビビを少しでも励ましてあげたいと、私も、船の上のみんなも思っていた。
「……もうすぐね。今のペースなら5日くらいでアラバスタへ着けるわ」
お互いに、まだ布団の中に入ったまま、顔をあわせて微笑む。
「ごめんなさい。私のせいでみんなをこんなことに巻き込んでしまって……」
そう言ってまた表情に影を落とすビビの言葉をさえぎるように、私は勢いをつけて起きあがった。
「さあて、そろそろ朝食の時間ね!」
ベッドに腰かけ、大きく伸びをしてから、私はビビに笑いかけた。
「大丈夫よ、ビビ。あんたが一緒に航海しているのは、とんでもないやつらなんだから!」
そう言って私は立ち上がって洋服に着替え、鏡に向かって髪を整え始めた。鏡ごしにビビが笑っているのが見えた。ビビの苦しみを、早く取り払ってあげたい。
大切な人が守りたいものを、一緒に守ってあげたいから。
「ナミさん、どうしたの?」
服を着替えて、髪を結わえたビビが私のすぐ側にやってきて、鏡の中に現れた。
「えっ、何が?」
振り向かずに、鏡で目を合わせて私が聞き返すと、ビビは少し嬉しそうに笑って言った。
「……なんだかこれからキッチンへ行くのが待ち遠しいみたい」
* * *
「おはようっ!! ナミさん! ビビちゃん! 今すぐ朝食を準備するからね!」
朝からサンジ君の声が弾んでいる。まるで踊っているかのように、軽やかな足取りで、時々ターンしながらキッチンとテーブルを行ったり来たりする。
「おはよ」
「おはよう、サンジさん」
そんなサンジ君の様子がおかしかったのか、ビビがくすくすと笑いながら挨拶を返した。ビビは私より後ろにいたから、私の顔を見たのはサンジ君だけだったけど。
どんな顔をしていいのかわからなくて、結局口をきゅっと閉じてしまった
昨日のことがウソのようで、でも、きっと本当のことで
本当なんだと思うと、恥ずかしくなって
サンジ君の顔もちゃんと見ることができなかった
「サンジーッ! 朝メシーッ!!」
ルフィがやってきて、ウソップとチョッパーが一緒にきて、その後にカルーもついてくる。最後にゆっくりとゾロが入ってきて、にぎやかな朝食が始まる。
サンジ君は私とビビのためのお皿を真っ先に並べてくれて、それを見たルフィが待ちきれずに私のお皿に手を伸ばす。私がお皿を守ろうと持ち上げると、ルフィは次にビビのお皿を狙う。ビビが笑ってそれを差しだそうとしたときに、ルフィの頭にサンジ君の蹴りが入る。ウソップとチョッパーは大笑いして、カルーとゾロはまだ半分夢の中にいる。
そんな日常。
ルフィとウソップが甲板に出て、釣りをしている。ゾロは相変わらず大の字になって寝ている。ビビとカルーはマストの上で故郷アラバスタが見えるのを今か今かと待っている。
キッチンではサンジ君が仕込みをしていて、私は航海日誌を書く。テーブルの向かい側ではチョッパーが医学書を読みふけっている。
そういう日常。
何かが変わっているはずなのに、何も変わらないような
サンジ君はタバコをくわえて、鼻歌まじりに野菜を切っている。航海日誌の手を止めてはその後ろ姿に目をやる。
サラサラと揺れている髪を見ても、その感触を思い出すことができなくて。包丁を握る手を見ても、その温度が思い出せなくて。
もっと、触れていたい
私のカラダがそれらをすべて記憶するまで
そんなことを思いながらぼんやりとしていたら、突然サンジ君が振り返って私に向かって微笑んだ。あまりにも突然すぎて、私はきょとんとしたままそこから視線を外すことができなかった。
「さて、と。おやつにするか。チョッパー! あのヤローどもを呼んできてくれ。それとビビちゃんもな」
顔が隠れるほどの大きな医学書から、チョッパーが目をキラキラさせて現れ、椅子から飛び降りると「おう、わかった!」と言って走って出ていった。
サンジ君の視線が再び私の方へ戻ってきた。少しずつ顔が熱くなっていくのを感じていたけど、それでもそこから目を離 すことはできなかった。
「へへ、ナミさん今朝からオレのことばっかり見てる」
そう言ってタバコの煙を吐き出すと、サンジ君はゆっくりと私の方へ歩いてきて、テーブルのはす向かいに座った。
「何、うぬぼれてんのよ」
私がそう言っても、サンジ君はタバコをくわえたまま頬杖をつき、説得力ないよと言って嬉しそうに笑った。
「今朝、目ェ覚めてすぐにさ、すっげえいい夢見てたなーって思ったんだよ。でも、キッチンに入ってきたナミさんの顔見たら、夢じゃなかったんだ、って……へへ」
そう言いながら歯を見せて、にっと笑ったサンジ君につられて私も自然と笑っていた。
「なんで笑ってんの?」
「……サンジ君こそ」
ぎこちなくて、でもくすぐったい空気が心地よい。
ルフィが騒ぎながらキッチンに近づいてくるのが聞こえた。サンジ君はタバコを指に挟んで、天井に向かって煙を吐き出すと、テーブルにもう片方の手をついて立ち上がった。
「やれやれ、うるせーヤローどもが来ちまったぜ」
そう言ってもう一度タバコを吸ってすぐに煙を吐くと、テーブルに置いた手に重心をかけて顔を近づけてきた。
「確認、していい?」
一度窓の外を見て、ルフィたちがまだ来ないように、と思っていた。 窓枠に丸く切り取られた空に白い雲が流れていくのが見えた。そしてもう一度サンジ君の方を見て「何を?」と聞こうとしたら、
サンジ君の鼻が、私の鼻に触れて何度かこ擦り合わせると
最後にそこにひとつ小さなキスを残して、離れていった
「おやつだ――――っ!!!」
ルフィが勢いよく扉を開けて入ってきたときにはすでに、サンジ君は冷蔵庫の方へと歩いていた。驚いて扉の方を見た私に、ルフィが言った。
「ナミ! お前まだ熱があるんじゃねえのか? 顔が赤いぞ!!」
それが多分、これからの「日常」
* * *
夕食を終えて、航海日誌も書き終わると、キッチンからほろ苦いコーヒーの香りが漂ってきた。
「コーヒー? こんな夜遅くに?」
そう聞くと、細長いケトルから少しずつお湯を回し注ぎながらコーヒーを入れているサンジ君が背中越しに答えた。
「ああ、オレ今日見張りだから、眠くならねえように、ね」
「ふーん……」
隣を見ると、ゾロがお酒を飲んでいた。すでに目はとろんとしていて、酔いよりも先に眠気に負けそうだった。
「……あんた、飲み過ぎないでよ。ただでさえ食料が少なくなってきてんだから」
私がそう言うと、話すのも面倒臭そうにゾロがこっちを見た。
「酒じゃ腹はふくれねェだろ」
「うるさいわね! あんた一人で飲んでるっていいたいのよ」
私の言ったことなんて軽く聞き流して、ゾロは大きく欠伸をして頭をガシガシとかいた。
「……ったく」
刀を腰に収めて立ち上がると、不機嫌そうな顔をしつつも、ゾロは私を見て口元で笑った。
「わかりやすいんだよ、てめェはよ」
「何がよ!」
私がつっかかると、ゾロはひらひらと手を振りながら「寝る」と言って出ていった。手にはしっかりと酒瓶を持って。
「何よ、もうっ」
勢いよく座り直し、両手で頬杖をついた。そして怒ったままの口調で投げ出すように言った。
「サンジ君、私にもコーヒー入れて」
すでに一杯目のコーヒーを飲み始めていたサンジ君がエプロンを外しながらテーブルに歩いてきた。
「いいけど、飲んだらナミさん眠れなくなるよ? けっこう濃い目に入れたから」
「いいの」
私がはっきりそう言うと、サンジ君はちょっと困った顔をして首をかしげた。
「じゃあ、少し薄めて、ミルク入れてあげようか?」
私を気遣うように、体を曲げて顔をのぞきこんでくる。本当に心配そうな顔をしているサンジ君を見ていると、実はこの人はものすごく鈍いんじゃないかって思えてくる。
むしろゾロの方が鋭かったりして。
「……だから、サンジ君見張りなんでしょ? だったら私も……寝ないから」
そう言った瞬間、顔が熱くなって、両手で必死で熱を吸い取ろうとしても、それは後から後から溢れてきて、私の体を熱で覆った。
それを聞いたサンジ君は、足を交差させて左手を胸に当て、丁寧に頭を下げた。
「かしこまりました、お姫様。それでは愛情たっぷりのスペシャルコーヒーをお入れいたしましょう」
「……バカ」
そう言ってもサンジ君は笑ったまま体を起こして、ポケットからタバコを取り出した。
「部屋に戻って毛布取ってくる」
私がそう言って席を立つと、とっさにサンジ君は私の手を掴んで 引きとめた。そのまま手を引いて、私の指に軽く口づけると、すぐに放した。
「2枚は必要ないよ?」
片手で器用にタバコの箱を開け、一本をくわえると、また器用にマッチを取りだし、靴の底で擦って火を点けた。煙があたりに漂いはじめ、サンジ君の姿もその中に滲んでいくように見えた。
「そうでしょ? ナミさん」
それが当たり前
そんな風に無邪気に笑った
* * *
「いつの間にか雪も降らなくなったね」
サンジ君が空を見上げて言った。
「月、まんまるだね」
深い青の中に明るく切り取られた月を見て、私も答えた。
空の色を映し出している海は穏やかで、遠くで空と交わるあたりはほんの少し弧を描いている。月は水面で絶え間なく形を変え、そして時々そのかけらを輝かせては消えていく。すべての音は月の光に吸い込まれ、海の底の静寂がゆっくりとあたりを包み込んでいた。
一枚の毛布の中で、サンジ君は私を後ろから抱きしめてくれていた。私の腕に自分の腕を沿わせて、その先で手をつなぐ。肩にあごを乗せ、私の右頬にサンジ君の左頬がぴったりとくっつく。小さなこの空間だけは、とてもあたたかい。
お互いに体温を交換しながら、とりとめのない話をする。
私の声と、サンジ君の声と。それは触れている頬を伝って不思議な響きを持つ。まるで、その声が自分の中から発せられているような、そんな響き。
「サンジ君の手、思ったよりごつごつしてるね。どうやったらこの手であんなに繊細な料理が作れるの?」
そう言って私はサンジ君の手の感触を確かめる。手のひらの柔らかさや、指の関節の太さをそっとなぞっていく。
「大切な人が喜ぶ顔を想像しながら作ってるんだよ。オレはいつもナミさんの嬉しそうな顔とか」
「顔とか?」
顔を少し横に向けると、私の唇がサンジ君の頬に当たった。するとサンジ君は少し肩を揺らしながら笑って、そして私の方を向いた。鼻筋に唇が触れて、ちょうど私の鼻に当たるあごひげがくすぐったい。
「……いろいろ」
含みを持った言い方が憎らしい。
「ちょっ……変なこと想像してないでしょうね?」
私が少し大きな声を出すと、サンジ君は私のおでこに軽く息を吹きかけた。ぞくぞくっとして肩をすくめる。
「そりゃもう、いろんなこと」
「バカッ!」
そう言ってサンジ君を遠ざけようとして毛布の中で体を動かしてもすぐに、強く抱きしめられて身動きが取れなくなる。
「だめだよナミさん、逃げられないって」
少し大げさにもがいて見ても、両手をしっかりと握られ、頬をぴったりとくっつけられて動けない。
「……逃がさないし」
悪戯っぽく笑って、そのくせ随分と大人びた顔をする。初めて見る表情。そしてすぐにいつものゆるんだ顔に戻る。
「うはっ、困ってるナミさんもかわいいなあ」
口をとがらせている私の頬にキスをする。嫌がった振りをして顔を背けると、今度は耳元にキスをされて、さっきよりももっとぞくぞくする。顔を戻すと、また頬にキスをされた。
「んー、もうっ!」
言葉とは裏腹に、その心地よさにそのまま身を任せた。髪に口づけられ、熱い息を吹き込まれる。気持ちよくて、そのまま眠ってしまいそうなくらいにあたたかい。
……パシャッ、パシャッ
「何?」
「うがっ!!」
驚いていきなり顔を上げたせいで、私の頭はサンジ君のあごを直撃してしまった。あごを押さえてもだえているサンジ君をよそに、私は立ち上がって音のする方向を見た。
そこには、
月明かりに照らされた幻想的な海を
美しい弧を描いて飛んでゆくイルカの群れ
「サンジ君、見て」
あごをさすりながらようやく立ち上がったサンジ君が、私の指さす方を見ると、大きく目を見開いてそのまましばらく動かなかった。
水音とともにかすかに聞こえる鳴き声
その水しぶきが月の光を受けてキラキラと輝く
海は、月に支配されて
まるで雪のように白く輝いている
「すげぇ……」
そう言ったぎり、またサンジ君は言葉を失って、そのまま立ちつくしていた。その横顔が月明かりに照らされて、透き通ってしまいそうなほど儚くて、そして、随分と遠くにいるような気がした
「ねえ、ナミさん」
かなりの時間が経ったあと、サンジ君が私を呼んだ。海から視線を外さないまま、ポケットからタバコを取りだして、火を点けた。
「オレ、オールブルーを見たよ」
「え?」
タバコの煙が空に流れていって、そのまま闇に消えていく。それからサンジ君はやっと私の方を見た。
「……夢の中だけどさ」
オールブルー
世界中の魚がそこに集い
名前のない色が広がる海
海図をおこしながら、時々本に現れるその海を
ただの夢物語だと思っていた
でも、ここに
それを信じて探し続けている人がいる
「……どこにあるんだろうな」
そしてまた、遠い目をする。それが、私を不安にさせる。
海を見ながらタバコの煙をくゆらせているサンジ君は、いつの間にか月を背に立っていた。手を伸ばして、そのシャツを掴むと、サンジ君はゆっくりと体を私の方へ向けた。
逆光になっているのに、サンジ君が笑っているのだけはわかって
笑ってくれているのに、なぜか悲しくなって
その胸にしがみついた
いかないで
私をひとりにしないで
私の気持ちが伝わったかのように、サンジ君は優しく抱きしめてくれた。子供をあやすように、頭を軽くぽんぽん、と叩いた。
「夢ん中では、ひとりだったよ。たったひとりでオールブルーを見てた」
そして耳元に口をつけると、そっとささやいた。
「でも、今度はナミさんが連れてってよ。オレを、オールブルーへ」
また強く抱きしめられ、私もサンジ君の背中に腕を回して抱きついた。何度も、何度もうなづく。
「うん……一緒に行こう」
おでこをつけると、サンジ君はまた鼻を擦り合わせて来た。
「……それ、好きね」
「だって、ナミさんの鼻すべすべで気持ちいーし」
そう言って鼻の頭にキスをした。片手で私の髪をかきあげると、今度はおでこにキスをする。
「ここも、すっげえ好き」
そして何度も何度もキスをされて、抱きしめてくれる。あったかくて、気持ちよくなる。
でも―――――
カラダはそれを記憶しない
唇が離れたらすぐに不安になって
体が離れたら怖くなって
姿が見えなくなったら きっと泣きそうになる
カラダのどこかで凍り付いて未だ麻痺している感覚
その理由はもうわかっている
わかっているから
「ねえ、サンジ君」
「んー、何?」
再び毛布にくるまって後ろから抱きしめられて、手を握って、頬をくっつけて。サンジ君は新しいタバコをくわえてまどろんでいた。少し抱きしめる腕に力を入れて、頬を押しつけられた。
「何? ナミさん」
何かを言おうとしても、何から言えばいいのかわからない
そしてそれをどうやって伝えていいのかもわからない
ただ、今言えることは
「好きよ」
「……は」
タバコが落ちそうになって、慌ててを火を消す。
「っはー、すっげえドキドキする。ホラ、聞こえる?」
そう言われて耳を澄ますと、背中から静かな振動が伝わってくる。規則正しく、時間を刻んでゆく心臓の音。
「ナミさん」
「ん?」
聞き返すと、サンジ君の心臓の音が少し強く打ち始めて、
「好きだよ」
さらに速くなっていく。それに呼応するかのように、私の心臓も音量を増す。
「ナミさんも、ドキドキしてる?」
そう言って耳元でささやかれて、私は小さくうなづく。
「どれどれ……」
握っていた手を離すと、サンジ君の左手はわざとゆっくり私の左腕をつたって触りながら胸に向かってくる。それを私は右手でくい止める。
「ちょっと! 何考えてんのよ!」
「へへへへ、ナミさんの心臓の音、確かめたくて」
そう言ってゆるゆるの顔で笑いながらも、今度は自由になっている右手が私の腰に触れながら上に上がってこようとする。
「バカッ! やめなさいよ」
今度は左手でそれを阻止する。
「ナミさんのケチー」
右手と左手、左手と右手の指を絡めて、私をくるむように抱きしめる。
「でも、かわいい」
おでこをくっつけて歯を見せて笑っているサンジ君は、無邪気でいて、なぜか大人っぽい。
きっと、言われるたびにドキドキして
言うごとにドキドキして
言い慣れることなんてない
言われ慣れることもない
そんな言葉を、もっとカラダに記憶させて
「ナーミさん」
「何よ」
目の前にある屈託のない笑顔。私はまだ少し怒ったふりをして聞き返す。
「キスしていい?」
その顔はまるで子供のように嬉しそうで。
「……さっきからさんざんしてるじゃない」
少し強がってつっぱねてみても、笑ってかわされる。
「だって、全然足りねえし、それに」
絡めていた指をほどいて、毛布の中から両手を出して私の頬を包み込むと、親指で唇をそっとなぞった。
「ここは特別だから」
私の唇がサンジ君のそれを受けとめる
そこからゆっくりと体温が流れ出す
頬にキスをされるよりも、おでこにキスをされるよりも
柔らかくて、あたたかくて、そして愛おしい
もっと長く
もっと強く
それをカラダが記憶するまで
月が水平線に近づき、反対側の海は少しずつ明るくなってきていた。耳元でサンジ君の規則正しい寝息が聞こえる。
少し口を開けて、私の肩にもたれて眠っている。
「……コーヒー、飲んだくせに」
そうつぶやいてみても、サンジ君は口を開けて微笑みながら、幸せそうな顔で眠っている。顔を近づけると、温かい息が私の顔をくすぐる。
サンジ君がそうするように、私も鼻を擦り合わせて、そしてサンジ君の鼻の頭にそっとキスをしてみた。
ねえサンジ君
こんな風に一緒にいることが当たり前になって
キスをするのも自然になって
いつか裸になって抱き合うときは
私のカラダの古い記憶をすべて
消し去って
私のカラダにはもう
サンジ君の温度しかいらない
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