a day under the tree 3

3 times a day 〜答えはその中に〜

KAKASHI×SAKURA

 

 


Dランクの任務は、いわば雑用のようなもので。
逃げた猫を捕まえることにはじまり、家の修理から街路樹の伐採まで。
まだ知識も経験も不十分な下忍には当然ではあるが、やはり募る不満は隠せない。

とりわけナルトのような、「火影になる」という偉大な目標を持つ者にとっては−もっともそれに近づく過程をすっとばしての発言ではあるが−こうした小さな積み重ねの任務は取るに足らないものに等しい。
ナルトだけではない、サスケにとっても同じことだろう。理由の違いこそあれ。
カカシもとうにそのことには気づいていた。

とはいえ、今は与えられた任務をこなすことが一番の近道なのだからと、憤る少年と初めからやる気を見せない少年を説得して、何とか事を進める。
それがいつものパターンだったのだが。

今回は違っていた。

「ナルト! サスケくん! カカシ先生! 絶対に見つけるんだからね!」

ひとり、異常に張り切っているサクラは先頭を切って歩いていく。

「サクラちゃんどーしたんだってばよー?」

しぶしぶついていくナルトとサスケには目もくれず、サクラは背中で答える。

「いいから! サボったら承知しないんだから。カカシ先生も今日は読書禁止!」

やれやれ…とカカシは洗いざらしの髪をかきあげた。


なんか気合い入ってるなー。女の子って感情移入しやすいんだよねぇ。


今回の依頼主は穏やかに年を重ねたであろう初老の夫婦。
結婚して数十年が経つが、近所でも評判のおしどり夫婦として有名らしい。
広大な土地を持ち、今は黄金色の小麦があたり一面を染めているとか。

そんな二人が最近珍しく大ゲンカをしたらしく、夫人は夫からもらった大切なネックレスをその小麦の海に投げてしまった。
それを探すだけの任務ならまだよかったが、夫の方が「ついでにこれも」と差し出した一枚の紙切れが、サクラのツボにハマったらしい。

「私の祖父が書いたものです。この間偶然見つけたのですが、気になって……」

その紙切れに書かれていたのは、


 つまさき立ちの男女が出会う黄昏どき

 重ねる唇のもとに刹那の光あり


「……わけわかんねーってばよ」
「暗号か?」
「んー……」

空に視線を移してカカシはしばらくの間考えた。思考の隅にはあらぬ妄想が広がりつつあったそのとき。

「宝探しよ!」

サクラが目を輝かせて叫んだ。あまりにも突然のことに、ナルトもサスケも、そしてカカシも一瞬言葉を失った。

サクラは得意気に続ける。

「これはきっと、道ならぬ関係の二人が人目を忍んでこっそり会っている場所のことね。
しかも二人が会えるのは日が暮れる頃なの。明るいと人に見つかっちゃうから。
それで、人知れずそっとキスをして……キャーッ!」

サクラもカカシ同様、妄想に走ったらしく、急に顔を赤らめた。
話がつかめないナルト、あきれるサスケ、そして微笑むカカシ。

さすが、サクラは年頃の女の子だねぇ……。

感心しながら、カカシは結論をつなぐ。
「で、その男女が密会する場所に、宝物が隠されているってことね」
「そういうこと!」

ただの遺失物捜索とは異なり、今回の任務にはサクラを魅了してやまないロマンがたっぷり詰まっていたようだ。



「じゃ、役割分担するわね! まず宝探しは私と…」
「こらこらサクラ、それはオレ決めるから」
空回りしそうなサクラをやんわりと制して、カカシは非情な判断を下した。

「ネックレスはナルト、サスケ、お前たち二人で探してちょーだい。間違っても手当たり次第に小麦畑を探し回らないこと! わかった?」

夫婦の所有する小麦畑はあまりにも広すぎる。端からいちいち探していたらそれこそ黄昏どころではない。

「えーっ!? なんで!? なんでナルトと…」
当然のように抗議してきたサクラに、カカシはにこっと笑って答える。
「サクラ、この任務は戦いに置き換えるとすれば頭脳戦でしょ? 考える人間と、動く人間が組まなきゃいけないでしょ? うちのチームの場合、考える人間と動く人間は誰と誰?」

少し声を荒げてサクラはすかさず答える。
「動くのはナルトとサスケくんでしょ?」
にやっと笑ってカカシも返す。
「本当の戦いならそうかもね。でもオレはこの機会にナルトとサスケにもう少しチームワークを学んでもらいたいのね。だからあえて二人を組ませるわけ」
「そんな……!」
「異議は?」
「……ありません」

カカシの写輪眼でない方の目が本気だったので、サクラはそれ以上言い返すことはできなかった。
しゅん、とうなだれるサクラの頭をぽんぽん、と軽くたたいてカカシがささやいた。

「今日はオレがサクラの指示で動くから。読書もしないよ?」


見上げた大きな瞳は少しだけうるんでいた。

「宝物見つけるんでしょ?」
「……うん」
「よし!」

軽く肩を叩いてサクラを促し、カカシはもう一度にっこりと笑った。


ごめんな、サクラ。


心の中でそう思いながら。



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