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喫茶ブルー・ブルー・ブルー 4  wondering 30's

SANJI on ZORO × NAMI


この年になると、同年代の女の子と中途半端なつきあいができなくなってきた。

こっちは遊び気分でも、向こうは本気になってしまうからだ。
だから、同時に複数の女の子とつきあって、それを隠すこともなく、そしてそれを悪びれもせず。
そうしたら、たいていは女の子の方から愛想つかして去っていく。それでいいんだ。

「また振られたんだってよ、マスター。しししっ!」
「うるせ」

食いかけのルフィの皿を取り上げて、オレはジロリと睨む。しかし、湿布を貼った情けない顔では、たいした迫力もなく、仕方なく皿をルフィに返してやる。

「ふたまたならまだしも、3まただもんなー。で、3人に揃って殴られたわけだ」
「余計な説明すんな」

ウソップはニヤニヤしながらナミさんに向かってオレの頬が腫れている理由を語る。

「……男の人ってみんなそうなの?」

不安そうにオレの目をのぞき込んでナミさんが言った。明かに、アイツは大丈夫だろうか、と頭の中でぐるぐるぐるぐる疑心がうずまいているようだ。

「ナミさんの彼氏君は大丈夫だよ」

タバコをくわえて眉を下げて笑うと、ナミさんはぴん、と背筋を伸ばして、少し顔を紅潮させて大きな声を出した。

「何でそんなことわかるの?」

思ったより店内に響いて、ナミさんは肩をすくめてしゅんとなる。その潤んだ瞳を隠すように、タバコの煙が流れてオレの視界を覆う。

「まーた何かあったんだ? っていうか、何もないことの方が珍しいよね」

そう言ってナミさんをからかうと、プイとそっぽを向かれてちょっと焦った。

「大丈夫だって! 彼氏君はナミさんだけだって、オレが保証してあげるからさ」
「なんでマスターが!?」

さらに口を尖らせて、ナミさんはオレを睨む。

「だって、オレは男だから」

そうだよ、オレだって男なんだから、ナミさんよりはヤツの気持ちがわかるよ、と念を押すようにニッと笑ってみせた。
少し目を見開いて、ナミさんはオレの次の言葉を待っていた。

「本当に好きな子がいたら、いい加減なことできねーよ?」

ふうん、と素っ気なく答えながらも、ナミさんの口元は少し笑っていた。
しばらく考えて、ふと何かを思いついたように顔をあげた。

「じゃあマスターがふたまたとか3またとか平気でしちゃうのは、本当に好きな子がいないからなの?」

うっ。

腫れた頬を湿布の上からさすりながら、オレはごまかすようにヘラヘラ笑ってみせた。
ナミさんの言葉は実に痛いところをついてくる。

「……マスターは結婚しないの?」

少し躊躇して、ナミさんがオレの顔をのぞき込んだ。

「したいよ、もーすげえしたいよ。オレ、結婚願望めちゃめちゃ強いのよ?」

「そうなんだ。でも何でまだ独身なの?」

ナミさんはオレの心にぐさぐさ突き刺す言葉を投げかける。オレは新しいタバコに火を点けてから苦笑して、ちらっとナミさんを見た。

「オヤジがね。料理人として一人前になってないヤツが所帯なんて持てるかって言うんだな、これが。オヤジもかなり晩婚だったからね」

「できちゃった結婚とかしちゃえば」

うあ、きっついなあ。

「そんなことしたら、それこそ勘当もんだ」

「マスターって意外と真面目なんだ」

あいたたた。

「真面目さ! オレは真面目なんだよ、ナミさん? いったい今までオレについてどんな誤解してたのさ?」
「……ん」

ナミさんはオレから目をそらせて肩をすくめると、ばつが悪そうにうつむいた。

「女グセ悪りィとか?」
「んー」
「ちぇ、そうなんだ」
「何も言ってないじゃない」
「いーや、顔がそう言ってるぞ」
「やだ、うそばっか」

カウンターに両腕をついて、その上に顔を乗せてオレは笑う。ナミさんは、頬づえをついてマグカップ片手に笑う。

「ゾロとナミより、マスターとナミの方がよっぽどカップルみてえだな! ししむごっ……!」

「バカッ! ルフィ!」

一瞬、そこにいた全員が目を見開いて、ルフィに注目した。ウソップが慌ててルフィの口を手でふさぐ。

「気にすんな、ナミ! なっ!」

ウソップは汗をかきながらナミさんにそう言った。

「やっぱり……」

せっかく元気になり始めていたのに、ルフィのせいでナミさんはまたうつむいて目を潤ませた。

ったく。

そう言われてオレは確かに嬉しいが、ナミさんにしてみりゃそれはつまりヤツとはカップルらしく見えないということで。そりゃショックに違いねえ。

やっぱり。

やっぱり私とマスターってお似合いなのね、とか言ってくれよ〜!

まあ、仕方ねえか。

「ナミさん、明日は彼氏君に期待してもいいかもよ? ホワイトデー」

オレがもう一度カウンターに両腕をついてにっこりと笑うと、ナミさんは怪訝そうにオレを見て、ため息をついた。

「期待なんてしないの。後でがっかりするのイヤだもん」

まったく、ヤツはよっぽど普段ナミさんに優しくしてねえんだなあ。
っていうか、それでも振られねーんだから、悔しいやら羨ましいやら。

「そんなことないとオレは思うけどなあ?」

ナミさんはオレをちらっと見て、「何かたくらんでる?」と言った。

「ん?」

そういうとこ、鋭いなーなんて思いながら、オレはそれでも何も言わずに笑っていた。


 

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