Just Talkin' to Himself 2
SANJI on ZORO × NAMI
一体何だってんだ。 あの緑頭のクソ剣士。やけにオレにつっかかってきやがる。 何かにつけてオレに張り合おうとしてくる。何かにつけてオレの言動に口を挟んでくる。料理に文句を付けようもんならただじゃおかねえが、酒が足りないだの、つまみ持ってこいだの、あごでオレを使いやがって。そのくせ人に使われるのは嫌だと言うんだから、何なんだよお前は。 別にお前の強さを認めないわけじゃねぇ。目の前で斬られたお前の姿を見て、お前の信念の強さを知った。くすぶっていたオレの中の何かを呼び覚ましたのもお前だ。だからオレは今この船に乗っている。 でも、強いだけじゃどうにもならないもんだってあるぜ? 気づいてんのか? お前に何が足りないのかって。 「バッカじゃないの!」 ナミさんの甲高い声がキッチンに響く。ゾロは腕を組んで顔を背ける。この二人のケンカなんていつものことだ。 「少しはサンジ君を見習いなさいよ!」 あーあ。これで矛先がオレに向くじゃないか。……いくらそれがナミさんの本音だからといっても。 「なんでオレがこんなヘラヘラしたクソコックを見習わなきゃいけねェんだ」 こうなったらオレも参戦せざるを得なくなる。 「ヘラヘラだぁ? レディーには優しくするのが男ってもんだろーが、この野生児! ね、ナミさん」 「そうよ、あんたにサンジ君みたいな優しさがほんのちょっとでもあれば」 「知るかよ!」 「ナミィ、お前の分も肉もらっていいか?」 のんきな船長がいつも絶妙なタイミングで張りつめた空気を緩くする。笑っている狙撃手とおろおろしている船医。王女さまとカルガモはあぜんとしてそのやりとりを見ている。こんな日常だ。 「ナミさんは優しい男が好きなんだぞ。ねぇビビちゃん!」 穏やかな表情で王女は言ったんだ。 「でも、Mr.ブシドーもとても優しい人だと思うわ」 それはね、ビビちゃん。 ゾロは確かに優しいさ。見ていてもわかるさ、君にはとても優しいってことは。でもね、誰にでも与えられる優しさを「本当の優しさ」と言うのなら、ナミさんが求めてるのは「特別な優しさ」なんだよ。 あーまったく。なんでお前はそんなに不器用なんだよ? 夕食後、航海日誌を付けるナミさんのペンは荒々しい。きっと、さっきのビビちゃんの言葉が気になって仕方ないんだろう。 「ナミさん、今デザート作りますね」 返事はない。ペンも止まっている。ナミさんは一点を見つめたまま、小さくつぶやいた。 「ビビには優しいのよね……」 明日の仕込みを終えて、寝室に戻ろうとキッチンを出た。規則正しい息づかいが甲板から聞こえてくる。またやってんのか。いつもはそのまま素通りするのだが、今日はどうもすぐに眠れそうにない。 月明かりの下でダンベルを振り回す男。逆光の影を眺めながら、タバコに火を点けた。その煙に気づいたのか、その影は動くことをやめ、切れ切れの息で言った。 「何見てんだ」 「別にお前なんか見てねーよ」 風上にいるオレは、わざと煙がアイツの顔にかかるように息を吐く。不快そうに煙をはたく影。 「だったら消えろ。そこにいられると集中できねェ。時間がねェんだ」 ああ、そうだな。アラバスタ到着まであと少し。 「お前がビビちゃんを守るのか?」 しばらく影は動かなかった。オレは2本目のタバコをくわえた。 「何が言いてェんだ?」 風が強くなってきて火はなかなか点かなかった。その間、アイツはオレの答えを待っていた。 「お前はクソ優しいよ」 「あァ!?」 それだけ言ってオレは火の点けられるところへ移動しようと歩き出した。背後からオレを呼ぶ声がした。 「どういう意味だ? クソコック! おい!」
クソコック。
名前で呼びやがれ。
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