伊達男で優男
〜Moulin Rouge〜
SANJI × NAMI
最高の夜をプレゼント
もちろん、僕のリードで
君を夢の世界に連れて行ってあげる
今回寄港した島は小さいながらも栄えている。
ログは2日。
早速「恋のランデブー」作戦開始。
「ウソップ、先に船に戻っててくれ」
そう言ってオレは買いだした大量の食糧袋を長い鼻の狙撃手に押しつける。
「一人でこんなに運べるかあっ!! コラッ! 待てサンジィィィ……」
「頼んだぞ。キノコのフルコースが食いてえか?」
この脅しは効果てきめん。長っ鼻は無抵抗のまま立ちつくした。
多少の罪悪感を感じながらも、オレは小高い丘の上にある建物を目指す。
レンガ造りの坂を上がっていくと、途中で道はふたつに分かれる。
ひとつはそのままレンガの連なる道。
そしてもうひとつは舗装されていない砂利道。
迷わず
砂利道を選ぶ。
小石がころころと足にまとわりつく道は、
外灯の弱々しい光の下、サンダルで歩くにはちょっと危険だ。
そこで僕は腕を差し出す。
「お手をどうぞ」
よろめくたびに僕の腕にしがみつく君。いいムード。
丘の上のレストランは古めかしい、歴史を感じさせる雰囲気。
お茶を飲みながらひととおりチェック。料理をチェック、ワインもチェック。
窓際のプライベートルームをリザーヴ。ベッドルームもちゃっかりリザーヴ。
宝石箱のような夜景を見ながらささやく。
「君の瞳の方がきれいだよ」
そして惜しげもなくその輝くふたつの宝石を瞼の奥に閉まって、
君は僕にすべてをあずける。
唇もカラダもすべて。
朝のけだるさの中、僕の腕の中で君がつぶやく。
「大好き」
そうしたら、僕は小さなキスをひとつ君の頬に残して、
目覚めのコーヒーを入れる。
うーむ、完璧。
満足してあご髭を撫でながら、坂道を下りていく。
あとは船に戻って彼女を誘い出すだけ。
彼女を。
彼女……
「んナミっすわあああんっ!!」
「サンジ君」
花屋の前に立っている彼女に駆け寄る。
「これから船に帰るとこ? ちょうどよかった! オレも……」
「あ、ごめん。私まだ買い物があるの」
「じゃあオレも」
「いいのよ。だって夕食の準備しなきゃでしょ?」
そう言って彼女はにっこり笑ってオレの曲がったネクタイをきゅっと直してくれた。
「またあとでね」
そして彼女は手をひらひらさせて、雑踏の中に消えていく。
オレの脳内でリフレインする言葉。
あとでね、あとでね、あとでね……
タバコの煙はハート型。
鼻の穴はふくらんでいく。
メロリン指数は一気に100。
「今の方はあなたの恋人ですか? お美しい方ですね」
花屋の女主人がオレに声をかける。
そしてまたリフレイン。
恋人、恋人、恋人……
メロリン指数は120。
さらにもうひとつ作戦を思いつく。
「あの丘の上のホテルに、今夜花束を届けてくれないか?」
「ええ、いいですよ。何にいたしましょう」
「バラを72本。真っ赤なバラの」
「あら、そうなんですか? さっきの女性にですよね?」
「もちろん」
部屋のドアがノックされて、受け取った花束をそのまま彼女に渡す。
「72本のバラだよ」
君の名前にちなんでそうしたんだ、と笑う。
そうしたらきっと彼女は一本足りないと気づくから、すかさず僕は続ける。
「最後の一本はココ」
そう言って発色のよい彼女の赤い唇に口づける。
文句なしのシチュエイション。
ぶふふふ、とひとりで笑っていると、女主人はくすくす笑いながら言った。
「彼女が喜ぶ花束にすればいいんですね」
「ああ、任せたよ」
そしてふわふわとした足取りで船に戻る。
船に戻って夕食の準備。ついでに明日の朝食も準備。
わけ知り顔の考古学者に目配せする。
「よろしくね、ロビンちゃん!」
健闘を祈るわ、と頬杖をついて微笑む、大人の女性。
部屋に入ったまま出てこない彼女。
ここで眠られたりすると大変だ。
急いでノック。扉をノック。
眠そうな目をこすりながら、彼女が出てくる。よかった、ギリギリセーフ。
「さ、行こうか? ナミさん!」
「どこへ?」
……初歩的ミス。
忘れていました、彼女のリザーヴ。
「あ、あの丘の上のレストランを予約したんだ」
「なんで?」
「なんでって……」
言葉に詰まったオレを呆れ顔で見ている彼女。
なんだか最初っから作戦変更の気配。
「私、今日はもう疲れちゃった」
「ええっ!? そんなぁ……」
「そういうのって、もっと早く言ってくれないと困るわ」
ハイ、ごもっともです。 スイマセン。
バタン! と勢いよく扉が閉まって、オレはその場に取り残された。
「なっ、ナミさん!?」
早くも作戦中止?
キャンセル? レストランもベッドルームも花束も?
「ナミさーん……」
もう一度情けない声で呼んでみる。ああ、あの花束どうしよう?
ギィッと音がして再び扉が開くと、そこには彼女の不機嫌そうな顔。
でも、ちゃんと髪を結わえて、よそいきの白いワンピースに着替えていた。
「退屈させたら承知しないんだから」
そう言って睨みつけてくるから、オレはただ「うん」とうなづくことしかできなかった。
とりあえず、作戦は遂行できそうだ。
「手、早く!」
「えっ!? あ、ご、ごめん」
むうっとした顔で手を差し出す彼女。残りたった数段の階段を登るだけなのに。
んん? もしかして甘えてくれてんのかな?
そう都合良く解釈すると、顔がにやけて、オレは彼女の手を素通りしてそのままその細い腰を抱えて持ち上げた。
「ちょっと! 手って言ったのよ!」
そう言って高い位置からオレを見下ろしながら、彼女はオレの頬の肉をうにーっと引っ張った。
滑り出しはコケたけど、まだまだ軌道修正可能な「恋のランデブー」作戦。
夜はこれから。
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